北辰電機製作所事件 東京地裁昭和56年10月22日判決(組合内少数派の活動と労働組合の行為)

事案の概要

(1) 昭和43年6月当時、X社には、日本労働組合総評議会全国金属労働組合(以下「全金」)及び日本労働組合総評議会全国金属労働組合東京地方本部(以下「地本」)を上部団体とする、日本労働組合総評議会全国金属労働組合東京地方本部北辰電機支部(以下「支部」)が存在しました。

(2) 昭和42年ころから、全金・地本の指導を尊重して会社に対し批判的態度をとる立場と会社の生産性向上施策に積極的に協力する立場との間で対立がありました。

(3) 昭和46年の執行委員選挙後、支部は全金・地本を脱退すること及び組合名称を「北辰電機労働組合」と変更することを決定しました。
 支部組合員のうち全金支持派であった約50名は、脱退決議以降も従前の支部名称を使用して組合活動を継続していました。

(4) X社は、全金支持派を強く批判し、全金支持派の組合員を昇格・昇給及び賞与の査定について差別的に取り扱いました

(5) 全金支持派の組合員のうち19名は、東京地労委Yに対し、救済申し立てを行い、救済命令が発せられました。X社は、これを不服として命令取り消しの行政訴訟を提起しました。

判旨・判旨の概要

一部認容、一部棄却

 企業内の唯一の組合に特定の傾向を有する組合活動を行う集団が存在する場合において…使用者である企業が組合員個人の賃金・昇格を差別的に取り扱うことは、当然、労働組合法7条1号の不当労働行為に該当し…差別的取り扱いをすることによって右集団の活動に打撃を与え組合の運営に支配介入をすることは同法7条3号の不当労働行為に該当すると解される。

解説・ポイント

 本判決の意義は、正当な組合活動に対して不利益取扱いを行うことは不当労働行為にあたると判断、確認した点にあります。

 具体的には、全金支持派の組合員に対して、特定の傾向を有することを理由に昇給、賞与の査定に際して差別的取扱いを行い、組合活動に不当な影響を与える支配介入を行ったとして労組法7条3号の不当労働行為にあたると判断しています。

参考文献

 本稿の執筆に当たり、以下の書籍を参考にさせて頂きました。ありがとうございました。

・最重要判例200 労働法(第5版)大内伸哉 著
・労働判例百選(第10版)村中孝史・荒木尚志 編