はじめに
育児休業給付とは
育児休業給付は、子供を養育するために育児休業を取得する場合に、育児休業期間中の生活費の保障のため、一定の要件を満たした被保険者に対して支給されるものです。
育児休業給付は雇用保険により保障され、事業主が支給するものではありません。
育児休業給付の種類
育児休業給付には、育児休業給付金と出生時育児休業給付金があります。
いずれも育児休業中の所得を保障するものですが、ザックリ分けると、前者は長期間の育児休業中に支給されるものであるの対して、後者は短期間の育児休業中に支給されるものと考えることができます。また、両者は、重畳的に受給することができます。
本稿では、前者の育児休業給付金について紹介致します。
支給要件
原則
育児休業給付金の支給要件として以下の2つが挙げられます。
1.被保険者が1歳に満たない子を養育するために休業したこと
2.当該育児休業を開始した日前2年間に、みなし被保険者期間が通算して12か月以上あること
この被保険者には、短期雇用特例被保険者(出稼ぎ労働者が対象と考えて下さい)や日雇労働被保険者は含まれません。
育児休業給付は、あくまで長期にわたり被保険者である者への特典のようなものだからです。短期の加入者が除外されているのはそのためです。
2の「みなし被保険者期間」とは、育児休業を開始した日を被保険者でなくなった日とみなして計算されることとなる被保険者期間に相当する期間のことをいいます。
この被保険者期間としてカウントされるためには、賃金支払基礎日数が1か月当たり11日以上ないといけません。この11日には有給休暇もカウントされます。
要するに、日割りで月11日分は働いていて、その11日分働いた月が通算して12か月以上あることが必要(要件)になるということです。
例外
養育する子は1歳に満たないことが原則ですが、1歳に到達した後も、休業することが雇用継続のため必要と認められる場合には、その子が1歳6か月に到達するまで休業することが可能となります。
さらに、夫婦共働きであって、抽選に漏れて保育園に入れないために職場復帰ができないような場合など一定の場合には、その子が2歳に到達するまでの間、育児休業を行うことができます。
このように、少子化対策の一環として、割と広く育児休業期間の延長が認められています。
パパママ育休プラス
同一の子について、配偶者が育児休業をする場合には、養育する子が1歳2か月に到達するまでの間、育児休業をすることができます。2か月間のみ謎の延長が認められています。
これを「パパママ育休プラス」といいます。養育する子が2か月延長されている点で、パパママ育休プラスも例外的な取り扱いといえます。
支給期間・支給額
支給単位期間について支給
育児休業給付は、支給単位期間に限り支給されます。
支給単位期間とは、条文上、育児休業をした期間を、当該育児休業を開始した日又は休業開始応当日(各月において休業を開始した日に応当し、当該休業をした期間内にある日)から各翌月の休業開始応当日の前日(当該休業を終了した日の属する月にあっては、当該休業を終了した日)までの各期間に区分した場合の当該区分の一つの期間のことをいう、と小難しく規定されていますが、単に、育児休業給付金が支給される期間と覚えておけば問題ありません。
たとえば、4月15日に育児休業を開始した場合、翌月の5月14日までを一つの支給単位期間と考え、この一支給単位期間に就業していると認められる日数が10日以下(10日を超えていても就業していると公共職業安定所長が認める時間が80時間以下)である場合に、育児休業給付金の支給対象期間と認められることになります。
支給額
育児休業給付金の支給額は、一支給単位期間について、次の計算式で求めた額が支給されます。少子化対策の観点から、休業日数が180日まではそれ以降(休業日数が180日以上)よりも支給額が高額となっています。
<休業日数180日まで>
支給額=(休業開始時賃金日額×支給日数)×67/100
<休業日数180日以降>
支給額=(休業開始時賃金日額×支給日数)×50/100
休業開始時賃金日額とは、雇用保険の被保険者が当該育児休業給付金の支給に係る育児休業を開始した日の前日を離職日とみなして算定する賃金日額のことをいいます。
育児休業開始日の前日がもっとも妥当な賃金といえるため、育児休業を開始した日の前日の賃金をもとに計算しようという趣旨です。
なお、実務では、休業開始時賃金日額は、休業開始日前2年間にみなし被保険者期間として計算された最後の6か月間(要は雇用保険の被保険者であった直近の6か月間)に支払われた賃金の総額を180で除して得た額として算定されています。
育児休業中に賃金が支払われた場合
育児休業中に賃金が支払われた場合、支払われた賃金の額によって、育児休業給付金の支給額が調整されます。
たとえば、休業日数が180日までの場合に支払われた賃金の額が「休業開始時賃金日額×支給日数」の額の13/100以下であれば、前述した(休業開始時賃金日額×支給日数)×67/100の額が支払われるのに対して、休業日数が180日までの場合に支払われた賃金の額が「休業開始時賃金日額×支給日数」の額の80/100以上であれば、育児休業給付金は支払われません。
すでに十分な賃金を受けているといえるからです。育児休業給付金は育児休業期間中の所得保障を趣旨としているため、賃金の8割も支給されているなら、育児休業給付金の出番はないということです。
支給申請手続
被保険者は、初めて育児休業給付金の支給を受ける時は、支給単位期間の初日から起算して4か月を経過する日の属する月の末日までに、事業主を経由して、以下の書類を所轄公共職業安定所長へ提出しなければなりません(原則)。
1.育児休業給付受給資格確認票
2.(初回のみ)育児休業給付金支給申請書
3.休業開始時賃金証明票
4.その他賃金の支払い状況及び賃金の額を証明する書類(たとえば給与明細)等
まとめ
本稿では、育児休業給付金について支給要件や支給期間、支給額などから支給申請手続きについてその概要を解説してきました。
育児休業給付金の申請手続きは、主に人事労務担当者が行うものですが、必ずしもその手続きに熟知している訳ではありません。
育児休業給付金の申請について、会社の協力を得られない、または人事労務担当者が余り申請手続きについて詳しくない、といった場合もありますので、そのような場合には、外部の専門家(社労士など労務管理の専門家)に相談してみると良いでしょう。