はじめに
毎日のように、私たちは、建設中の建物や交通整理の現場で働く日雇労働者の方々を見かけます。
彼らが、日常生活で病気やケガをした場合にも、一般のサラリーマンやOLたちと同じように、健康保険を使えるのでしょうか。
業務上や通勤上の病気、怪我であれば、通常、労災保険の適用により、自己負担なく、通院して治療に専念することができますが、業務上や通勤上の病気、怪我でない場合に、日雇労働者も健康保険を使って通院することができるのでしょうか。
健康保険の適用を受けることが出来れば、皆さんがご存知のように、自己費用の負担割合が原則3割となり、日常生活を送るうえで、健康に過剰に気を遣うことなく、安心して過ごすことができるはずです。
本稿では、日雇労働者の健康保険の適用について、その概要を紹介致します。
日雇労働者とは
日雇労働者となる要件1
先ほど、日雇労働者の例として、建設現場や交通整理の現場で働く労働者を例に挙げましたが、健康保険の適用を受けるためには、まず、健康保険法上定義されている日雇労働者に該当しなければなりません。
具体的には、健康保険の適用を受ける日雇労働者と言えるためには、次のいずれかに該当する必要があります。
1.臨時に使用される者であって、
⑴ 日々雇い入れられる者(なお、1か月を超えて使用されると一般の被保険者として扱われることになります)
⑵ 2か月以内の期間を定めて使用され、当該期間を超えて使用されることが見込まれない者(2か月以内の定めた期間を超えて使用されると一般の被保険者として扱われることになります)
2.季節的業務に使用される者(出稼ぎ労働者など)
当初から4か月を超えて使用される者は、当初から一般の被保険者として扱われることになります。
3.臨時的事業の事業所に使用される者(サーカスなどの興行を行う者など)
日雇労働者となる要件2
次に、健康保険の適用を受ける日雇労働者と言えるためには、日雇労働者が、適用事業所において使用されていなければなりません。
適用事業所とは、健康保険の適用を受ける事業所のことを言いますが、適用事業所には、法律上当然に健康保険の適用を受ける強制適用事業所と、事業主の申請に基づき厚生労働大臣の認可により適用事業所とされる任意適用事業所の2種類があります。
もう少し具体的に説明すると、適用事業所とは、次のいずれかに該当する事業所のことをいいます。
1.法定17業種に該当する事業所であって、常時5人以上の従業員を使用するもの(個人経営が前提となります)
法定17業種とは、農林水産業などの第1次産業や旅館、飲食店、クリーニング、理容、接客などのサービス業、宗教業を除く業種のことだと理解しておけば良いでしょう。
2.国、地方公共団体又は法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの(つまり、会社勤めであれば必ず健康保険の適用を受けるということです。たとえ試用期間中であったとしても)
健康保険の適用を受ける日雇労働者
日雇特例被保険者
健康保険の適用を受ける日雇労働者、つまり適用事業所において使用される日雇労働者のことを、日雇特例被保険者と言います。
適用除外
日雇特例被保険者となるための要件を満たしていても、後期高齢者医療の被保険者である者や次のいずれかに該当する者として、厚生労働大臣の承認を受けた者は、日雇特例被保険者と扱われず、健康保険の適用が除外されます。
1.適用事業所において、引き続く2か月間に通算して26日以上使用される見込みがない者(日雇労働者として働くにしても短期間過ぎて、保険料と保険給と収支が合わな過ぎるというのが趣旨だと考えられます)
2.任意継続被保険者であるとき
3.その他特別の理由があるとき(特別の理由とは、農業など本業を他に有する者が臨時に日雇労働者として使用される場合や、昼間学生が夏季休暇など長期休暇を利用して臨時に日雇労働者として使用される場合などが該当します)
まとめ
日雇労働者であっても、健康保険の適用を受けることはできますが、すべての日雇労働者が健康保険の適用を受けることが出来るわけではありません。
本稿でも述べたように、日雇特例被保険者として、日雇労働者が健康保険の適用を受けるためには、適用事業所に一定期間使用され、かつ健康保険の定義する「日雇労働者」である必要があることになります。すべての日雇労働者が必ずしも健康保険の適用を受けることが出来るわけではないことに注意が必要です。
なお、健康保険の適用を受けることが出来ない場合には、健康保険に代わるものとして、個人事業主が加入する国民健康保険があるので、この国民健康保険に加入し、その適用を受ける必要があります。
ただし、健康保険と異なり、国民健康保険の保険料は、全額自己負担となり、保険料もそれなりにするので加入する場合には注意が必要です。