国民年金基金とは何か

はじめに

 みなさんは、国民年金基金という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
 
 多くの会社勤めの皆さんは、厚生年金保険に加入しているため、余り縁がない言葉かもしれません。
 しかし、国民年金基金は、会社勤めのサラリーマンやOLのみなさんにとっては、縁のない言葉でも、個人事業主など国民年金の第1号被保険者にとっては、将来受け取る年金額に重要な影響を与える、必ず知っておきたい制度です。

 そこで、本稿では、この国民年金基金の概要についてご紹介したいと思います。

国民年金基金とは

年金増額の制度

 国民年金基金とは、国民年金の第1号被保険者が、将来受け取る老齢基礎年金に上乗せが得られる制度のことをいいます。要するに、年金額の増額の制度ということです。

 そして、この国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者しか加入することはできません。つまり、サラリーマンやOLなど会社勤めの方たちは加入することができないということです。

国民年金基金の意義

 なぜ、国民年金基金には国民年金の第1号被保険者しか加入できないのでしょうか。

 ご存知のとおり、会社勤めの方たちは、厚生年金保険に加入しているため、国民年金の第2号被保険者になっています。

 みなさんが会社から毎月もらう給与明細表には、厚生年金保険料しか控除されていないため、国民年金に加入しているという認識は薄いかもしれませんが、国民年金は強制加入制度であるため、会社員であっても国民年金には加入しています。

 会社員であるということは、厚生年金保険に加入しつつも、国民年金の第2号被保険者として加入しているということになるのです(ちなみに厚生年金保険の被保険者としては、第1号被保険者となります)。

 厚生年金保険に加入することにより、将来支給される年金額が増額されますが、国民年金の第1号被保険者は、この厚生年金保険に加入することができません。そのため、国民年金の第1号被保険者は、厚生年金保険に加入している人たちと、老後に支給される年金額に差が生じることになります。

 そこで、この差を埋め、厚生年金保険に加入している方たちと国民年金第1号被保険者との間の年金額の均衡を図るため、国民年金基金の制度が設けられたのです。

国民年金基金への加入

国民年金基金の種類

 国民年金基金には、地域型国民年金基金職能型国民年金基金の2種類があります。
 現在、前者については、全国国民年金基金の1つだけであり、後者については、医師と弁護士、司法書士が設立したもの3つしかありません。

 つまり、医師や弁護士などの一定の職種を除いて、個人事業主が国民年金基金に加入する場合には、地域型国民年金基金に加入するということになります。

加入方法 

 国民年金基金への加入方法はとても簡単です。
 第1号被保険者である者が、その者の住所がある地区に係る地域型国民年金基金またはその従事する業務(医師、弁護士、司法書士)に係る職能型国民年金基金に加入の申出をすることで足ります。

 ただし、同時に2以上の基金の加入員となることはできません。複数の国民年金基金に加入して、より多くの年金の上乗せを狙うことは認められない、ということです。

加入員の資格を喪失する場合

 国民年金基金に加入しても、次のいずれかに該当する場合には、それぞれ定める日に加入員としての資格を喪失することになります。

1.被保険者の資格を喪失したとき(死亡や年金受給権者となった場合など)、又は第2号、第3号被保険者となったとき・・・その日
2.地域型国民年金基金の加入員が当該基金の地区内の住所を有するものでなくなったとき・・・その日の翌日
3.職能型国民年金基金の加入員が当該事業又は業務に従事する者でなくなったとき・・・その日の翌日
4.法定免除や申請全額免除など保険料の全額又は一部の免除が認められたとき・・・保険料の納付を要しないものとされた月の初日(この場合だけ特殊な扱いです)
5.農業者年金の被保険者となったとき・・・その日
6.基金が解散したとき・・・その日の翌日

 これらの特徴としては、代替する制度に加入するなどの事情がない場合には、可能な限り、加入者としての資格を保有させておこうとする趣旨がみてとれます(私だけ?)。

国民年金基金の給付時期と額

給付時期

 国民年金基金は、少なくとも、加入者であった者が老齢基礎年金の受給権を取得したときには、その者に支給されるものでなければなりません。老齢基礎年金は、支給の繰り上げや繰り下げなどしない限り、原則65歳から支給されるものですので、国民年金基金も65歳から支給されるものと考えてよいでしょう。

給付額

 国民年金基金の給付額は、「200円×納付された掛金に係る当該年金の加入員期間の月数」で計算された額を超えるものでなければならない、とされています。これは、少なくとも付加年金よりは高額でないと国民年金基金に加入した意味がなくなるので、少なくとも付加年金よりは、支給しようという趣旨です。

 端的に言うと、少なくとも年額6万円以上は老齢基礎年金に上乗せして支給されなければならない、といことです。

まとめ

 以上、非常に簡単にではありますが、国民年基金の意義や加入方法、給付額についてその概要を解説致しました。個人的な印象としては、年金の増額と言っても、付加年金の上位互換という程度で、付加年金との併用を考えても、年金額の大幅増額にはつながらないなぁ、という感じがしています(付加年金と合わせて年額12万円の増額なので、月額換算すると月1万円の増額に過ぎませんし)。

 個人事業主など国民年金第1号被保険者は、将来の年金受給額を増やすためにも、国民年金基金を利用することはもちろん、イデコなど個人型確定拠出年金などを利用して、別途、自ら私的年金を準備しておくことが重要だといえるでしょう。