弁護士の選び方(HPや口コミに騙されない)

結論

 担当になる弁護士と必ず対面で話してから選ぶべきです。
 現在ではオンラインでも良いと思いますが、可能なら直接会って話すのが良いでしょう。
 
 依頼すると、一般的に、依頼開始から終了まで約半年ほどの期間がかかります。
 その間、事件の進捗状況を確認するためにも担当になる弁護士との相性を確認すること大切です。
 
 相性が悪いと、徐々にコミュニケーションの機会が減り、依頼者と弁護士間で事件に対する認識のずれが生じることになるおそれがあるからです。
 
 そうなると、事件の結果が客観的に相当なものだとしても、当事者(主に依頼者)は不満を感じたまま事件を終了させてしまうことになるでしょう。
 担当弁護士の法律の知識や実務経験も気になるところではありますが、弁護士との相性の方がずっと大切です。  

 本稿では、弁護士や法律事務所の公式サイトでは語れない本音にも触れてご紹介致します。

弁護士に相談する前に

⑴まずはHPを確認する

 現在、多くの法律事務所がHP(ホームページ)を作成して事務所の紹介をしています。
 HPを外注している法律事務所がほとんどであり、どの法律事務所のHPに大差はありませんが、そもそもHPのない法律事務所は、基本的に相談の対象から外して良いでしょう。 

 HPを作成しない理由は様々ですが、たとえば、そもそも個人の相談は紹介による相談以外受けていなかったり、昔ながらの高齢の弁護士がITに疎くてそもそもHPの有効性に十分きづいていなかったりなどが挙げられます。
 
 いずれにせよ、時代のニーズに追い付いていない法律事務所が多、顧客サービスへの配慮が足りないとの印象が拭えません。高額な報酬を支払ってまで依頼するのは見直した方が良いでしょう。

⑵法律事務所の規模を確認する

 一般的に、弁護士の数が多ければ多い方が良いというイメージがあります。
 いわゆる4大事務所と呼ばれる有名法律事務所の抱える弁護士数は非常に多く、ブランド力もあり、顧客集客力もあります。
 
 しかし、弁護士数と弁護士の能力に相関関係はありません。弁護士が多いから弁護士の能力が高い、顧客満足度も高いという訳ではないのです。
 そもそも、相談者からすれば、どの弁護士に相談して良いか分からなくなりますし、ハズレの弁護士や新人1年目の弁護士をあてがわれる可能性もあります。
 個人のお客様がいきなり大規模の法律事務所にいくことは余りお勧めできません。

 個人的には、10人前後の弁護士が在籍している法律事務所が良いと考えます。
 ある程度、専門を持つ弁護士が在籍している可能性が高く、弁護士間で協議するのに適した人数といえるからです。弁護士は一人で問題を解決するよりも、数人で協議して問題を解決することが多いものです。 

 なお、誤解の内容に補足しておきますが、1年目の弁護士が必ずしも悪いというわけではありません。
 1年目の弁護士は実務経験や社会常識に欠けていることがしばしばですが、熱心で誠実な弁護士も多く、弁護士一人で対応できない事件は、ベテラン弁護士が中心になって協議して対応しているため、能力不足で事件が暗礁に乗り上げる危険性は小さいといえるからです。

 また、弁護士の数が極端に少ない法律事務所も、知人から紹介して貰ったような場合を除き、相談することは控えた方が良いでしょう。
 開業したてで熱心に取り組んでくれる弁護士もいますが、事務所運営のために一人で膨大な事件を抱え込み、依頼者が必要な時に十分な連絡がもらえない可能性があるからです。

⑶相談したい内容の分野の弁護士を選ぶ

 交通事故や相続、離婚、労働、債務整理、債権回収などの問題については、そもそも相談の母数が非常に多いので経験実績豊富な弁護士が多く、どの弁護士に依頼しても大きな差はありません。 

 大きな差がないというのは、どの弁護士に依頼しても結果に大きな隔たりはないということです。ただし、弁護士費用については法律事務所によって差があるので注意が必要です。
 
 また、これらメジャーな相談分野について、ネット上に「交通事故専門」とか「相続専門」など沢山の広告がありますが、どの弁護士でも対応できる内容なので、これらの広告サイトに騙されないようにしましょう。
 
 実際、交通事故専門と謳っている時点で、この弁護士又は法律事務所に本当の専門分野を扱う弁護士がいないのかなぁと疑ってしまいます。

 大切なのは、これらメジャーな分野以外(知的財産、IT関連、企業法務など)について相談する場合には、これらを専門としている弁護士に相談した方が良いということです。
 HPには「弁護士紹介」といって在籍弁護士のプロフィールが掲載されていますので、それを見て専門分野を確認すると良いでしょう。

弁護士と対面で相談する

⑴必ず弁護士本人と対面で相談する

 現在ではオンラインですることもあると思いますが、できれば直接弁護士本人と会って相談するのが良いでしょう。
 理由については、先に挙げた通り、十分なコミュニケーションをとって依頼者と弁護士間で事件について認識のズレがないようにすることで、最終的に依頼者と弁護士双方が満足のいく結果を享受することができることになるからです。 

 なお、法律事務所によっては、予約をとって法律事務所に赴いたにもかかわらず、弁護士が対応せずに、終始、法律事務所のスタッフがヒアリング等を行う場合があります。
 
 たとえスタッフが優秀であったとしても、理解不足や方針に誤りが生じる可能性が高いので、相談に行っても弁護士が出てこない法律事務所に相談、依頼するのは控えた方がよいでしょう。

 弁護士との日程調整や書類のやり取りなど、形式的な事務作業はスタッフに任せるべきですが、直接相談内容に関わることについて弁護士が対応しない場合には要注意です。
 
 また、依頼した後に何かと理由をつけて急に連絡が取りづらくなる弁護士もいますので、こういった弁護士にも要注意です。あまりにも対応が酷い場合には解任も検討した方が良いでしょう。

⑵他の法律事務所も回ってみる

 法律事務所からすると、あまり好まれませんが、できれば2つの法律事務所に同じ相談をしてみましょう。おそらくどの弁護士に相談しても弁護士の回答に大きな差はないことが分かるはずです。
 差が生じた場合は、いずれかの弁護士の能力に問題がある場合があるので要注意です。
 
 当たり前ですが、弁護士は、個人の主観的な感想で相談への回答を行うことはありません。
 判例や裁判例、学説、実務上の取り扱いなど、これまで多くの弁護士ら法律実務家によって積み上げられた知見に基づいて判断するので、たとえ法律事務所が違っても弁護士間で回答に大きな差が出ることは少ないのです。あえて有名な法律事務所に行く必要がないのもそのためです。

 大きな差がない場合には、相性の良い弁護士やできるだけ弁護士費用の安い法律事務所に依頼するとよいでしょう。

まとめ

 弁護士を選ぶなら一つの大きな基準として、
1. 相談前にHPを確認する
2. 法律事務所のあまり大きすぎず小さすぎない規模を選ぶ
3. 相談する弁護士の専門分野を確認する
4. 弁護士本人と直接会って相談する
5. 他の法律事務所も回ってみる
 
 以上、5点を意識して相談又は依頼すると良いでしょう。
 本稿が弁護士を選ぶ一つの目安となれば幸いです。