遺族を救え

はじめに

 タイトルが意味不明ですが、本稿では残された遺族に特定の要件を満たせば支給される貴重な生活資金となる遺族基礎年金について紹介します。
 
 はじめに断っておきますが、割と支給要件は厳しいです。
 国民年金に加入していた配偶者が亡くなったから、直ちに支給という訳にはいきません。
 というわけで、どうやったら遺族基礎年金が支給されるのか、この点について解説していきたいと思います。

遺族基礎年金とは

遺族を救う国民年金

 遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者又は被保険者だった者特定の要件に該当する場合に、その者の配偶者又はに対して支給される年金のことをいいます。

明文にない支給要件

亡くなった者が20歳以上であること

 遺族基礎年金の支給要件は別に定められているのですが(後述します)、上記遺族基礎年金の意義からも分かるように、亡くなった者が国民年金に加入していること又はしていたことが必要になります。

 つまり、国民年金は強制加入の保険である以上、亡くなった者が20歳以上であることが要件となっているということです。
 たとえば、20歳未満の若い夫婦の一方が亡くなった場合には、国民年金には加入していない以上、残された配偶者やその子には遺族基礎年金が支給されない(そもそも発生しない)ということになります。

 なお、20歳前でも加入できる厚生年金保険の場合だと話が異なってきますが(遺族厚生年金が支給される可能性がある)、その話はまた別の機会に解説します。

亡くなった者の配偶者又は子であること

 遺族基礎年金の支給を受けるためには、亡くなった者の配偶者またはであることも要件とされており、遺族の範囲が非常に限定されています。
 しかも、この配偶者と子は、亡くなった被保険者と生計を同じくしていたことが必要とされており、当該被保険者と別居などしていると、遺族基礎年金の支給対象ではなくなってしまいます。

 また、この配偶者と子についてもそれぞれ条件が定めらています。

 まず、配偶者であれば、子を有し、かつその子と生計を同じくしていることが必要となります。
 これは、遺族基礎年金の趣旨が、残された子の福祉のためにあるからだと考えられます。
 つまり、幼い子を配偶者一人で養うのは大変だろうから、遺族基礎年金も使って子を養いましょう、ということです。子がいないなら、自分の年金だけで何とかしろ、という側面があることも見て取れます。

 次に、子であれば、その子は、死亡した者の子である必要があり、法律上の親子関係がないといけません。そして、被保険者の子であれば、いつまでも受給できるかというと、そうではなく(年齢制限があり)、現に婚姻しておらず、かつ、18歳に達する日以後最初の3月31日までの間にある子または20歳未満であって障害等級1~2級の障害状態にある子であることが必要とされています。

遺族基礎年金の支給要件

死亡日要件

 遺族基礎年金は、被保険者又は被保険者であった者が次の1から4のいずれかに該当する場合に配偶者又はに支給されます。

1.被保険者死亡したとき
2.被保険者であった者であって、日本国内に住所を有し、かつ60歳以上65歳未満の者が死亡したとき
3.老齢基礎年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者に限ります)が死亡したとき
4.保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者が死亡したとき

 上記3と4からも分かるように、25年もの非常に長期にわたる保険料納付済みまたは免除期間が必要とされており(合算対象期間も含まれますが)、単に老齢基礎年金の受給権者であるからといって、遺族基礎年金が支給されるわけではないということです(老齢基礎年金は10年受給資格期間があれば支給されます)。
 勘違いしがちですが、亡くなった者の老齢基礎年金が遺族基礎年金へのそのままスライドする訳ではないのです。

保険料納付要件

 保険料納付要件は、上述した死亡日要件の1又は2の場合に必要とされ、3又は4の場合には必要とされません。25年もの長期間にわたり保険料納付又は免除期間がある以上、保険料納付要件はすでに充足していると考えられるからです。

 上述の1又は2の場合は、その死亡した者について、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があるときは、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が、当該被保険者期間の3分の2以上であることが要件とされます。

まとめ

 以上のように、遺族基礎年金が支給されるためには、死亡日要件と保険料納付要件、対象となる遺族要件の3つをクリアしないといけないことが分かります。

 とりわけ、死亡日要件のハードルがかなり高いので、そうそう支給されることはないと考えた方がよいでしょう。とはいえ、まだ未成年の子がいる配偶者にとっては、支給される可能性があるので、ご自身が亡くなった遺族の子を持つ配偶者である場合には、支給要件を満たすか確認しておくべきだと思います。