介護補償給付の支給申請方法

介護補償給付とは

 介護補償給付とは、労働災害により介護を要する状態となった被災労働者に対して、労働災害補償保険(以下「労災保険」といいます)の保険者である国(政府)より支給される保険給付のことをいいます。

 近年の少子高齢化や核家族化、未婚者の増加などの影響により、被災労働者を家庭内で介護することがますます難しくなっています。また、介護の状態、程度などにより介護費用の負担も大きくなることなどから、介護補償給付の重要性が注目されています。

 本稿では、この介護補償給付の支給要件や申請手続などその概要を分かり易く紹介しています。
 なお、労災の原因が業務上のものか、又は通勤上のものかにより、介護「補償」給付と介護給付に区別されますが、本稿ではまとめて「介護補償給付」として解説しています。

支給要件

3つの要件

 介護補償給付が支給されるためには、被災労働者が以下の3つの要件をすべて満たさなければなりません。

1.障害補償年金または傷病補償年金を受給できる権利があること
2.介護補償給付を受けようとする障害の事由(事実と理由のこと)が受給できる障害補償年金または傷病補償年金の支給事由と共通しており、障害の程度が2級以上と重度のものであって、かつ常時または随時介護を要する状態にあること
3.常時または随時介護を受けていること

 介護補償給付は、被災労働者を介護する者にではなく、被災労働者自身に支給されます。被災労働者が労災保険の被保険者であったからです。

休業補償給付とは併給されない 

 休業補償給付は、被災労働者が療養のために休業する間、その間の生活保障として傷病が治癒される(症状固定)まで国から支給されるものをいいます。
 なお、実際に休業補償給付の支給申請を行い、支給決定するのは所轄労働基準監督署長となります。

 この休業補償給付の受給後(正確には療養の開始後)、1年6か月を経過しても傷病が治癒せず、症状も重い(傷病等級1~3級)と所轄労働基準監督署長により判断された場合、職権により傷病補償年金の支給決定がなされます。

 イメージとしては、療養開始後受給していた休業補償給付から傷病補償年金に切り替わったものと考えるとよいでしょう。そのため、休業補償給付と傷病補償年金は同時に支給されないことになります。

 そして、支給要件にあるとおり、介護補償給付の支給要件の1つに「障害補償年金または傷病補償年金を受給できる権利があること」があります。
 そのため、休業補償給付を受ける状態では、介護補償給付も受けることが出来ないということになります。

 なお、障害補償給付は、傷病が治癒されて(症状固定後に)初めて支給申請を行い、所轄労働基準監督署長により支給決定がなされるものです。
 そのため、休業補償給付と障害補償給付との併給もあり得ないということになります。

支給されない場合の具体例

 支給要件を満たしているように思えても、次の場合は、介護補償給付の支給対象とされません。

1.障害者支援施設に入所し生活介護を受けている場合(同施設に準ずる施設も含みます)
2.病院または診療所に入院している場合

 これらの場合は、入所施設などからすでに十分な介護を受けているといえると考えられるからです。
 個人的には、この場合でも施設や病院等への利用料として、費用を負担することになるのであるなら、介護補償給付の支給があるべきではないかと思います。

支給額

支給額は毎年変わる

 介護補償給付は、月(暦月)を単位として支給されますが、その支給額は、厚生労働大臣が介護に通常必要な費用や経済事情など諸般の事情を考慮して決定します。

 そのため、介護補償給付の支給額は、毎年微妙に変わることになります(据え置かれて変わらない年もあります)。

支給額は実費

 介護補償給付の支給額は、介護費用を実際に支出した費用である実費となります。
 
 支給額の上限は、常時介護を要する状態なのか、又は随時介護を要する状態なのかにより異なります。随時介護を要する状態の場合、支給額の上限額は、常時介護を要する状態の場合の半分とされています。
 
 常時介護を要する状態の場合は、支給額の上限額は、171,650円とされています(令和5年2月現在)。ただし、介護費用の支出額が75,290円未満の場合は、支給額の上限額は、75,290円とされています。

 なお、あくまでも上記金額は、上限額であって、支給される金額は支出した実費に限られるということに注意が必要です。実費に限られない場合は次に説明します。

最低額の保障

 親族などの介護があっても、前月まとめて必要な介護に必要な物は買い揃えたから、今月はお金はかからなかった、というような場合はあるはずです。
 この場合、前月の時点で今月分の介護料を実質負担しているのだから、支出はなかったとはいえ、今月もいくらか保障して欲しいと思うことはあるはずです。

 そこで設けられたのが、介護補償給付の支給額の大きな特徴である、最低保障額の支給です。
 上記ニーズに応えるため、介護費用の支出がない場合にも、将来の支出を見越して、最低保障額が定額で支給されるようになったのです。

 具体的には、実際に介護費用の支出がなくとも、親族などによる介護の事実があった場合には、支給事由が生じた月の翌月から定額で75,290円が支給されます。
 
 最低額の保障とはいいましたが、介護費用の支出がなく、親族などの介護がない場合には、当然ながら介護補償給付の支給はありません。
 介護補償給付の支給の趣旨は、あくまでも介護料を補填する点にあるからです。ただで支給されるわけではないので誤解しないようにしましょう。

請求手続

労基署に申請する

 介護補償給付の支給を受けるためには「介護補償等給付支給申請書」(厚労省HP掲載)という請求書に必要事項を記入して、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
 
 上記請求書の記入例は「介護(補償)等給付の請求手続」(厚労省HP掲載)を参考にすると良いでしょう。記入漏れがあっても補正は可能なのであまり神経質になる必要はありません。労基署は使用者には厳しいですが、労働者にはわりと親切です(筆者体感)。

請求時期

 介護補償給付の支給を受けようとする者は、上記申請書を以下のタイミングで提出する必要があります。

1.障害補償年金の受給権者の場合は、障害補償年金の請求と同時または請求をした後
2.傷病補償年金の受給権者の場合は、傷病補償年金の支給決定を受けた後

 傷病補償年金の支給は、所轄労働基準監督署長により職権で決定されるため、支給の決定を受けた後にならざるを得ないため、このような違いが生じます。

まとめ

 本稿では、介護補償給付の支給要件や支給額、支給申請手続などその概要を紹介しました。
 
 私見ではありますが、介護補償給付は、最低保障額があるとはいえ、支給額は低額にならざるを得ず、その上、障害者支援施設など介護施設などに入所していると支給が停止するなど使い勝手は余り良くない印象があります。
 
 介護補償給付は、あくまでも介護料など実費の補填ととらえ、生活保障費については、併給可能な傷病補償年金や障害補償年金または民間の保険などで賄うようにした方がよいでしょう。