高額介護合算療養費の概要と解説

はじめに

 みなさんは、高額介護合算療養費という言葉をご存知でしょうか?
 高額療養費という言葉は聞いたことがあっても、高額合算療養費という言葉を知っている、又は理解している人は少ないかもしれません。

 本稿では、健康保険法上規定されているこの高額合算療養費について、その概要を紹介したいと思います。

高額介護合算療養費とは

高額療養費と仕組みは共通

 まず、高額合算療養費を理解する前に、類似の制度である高額療養費について理解があると、高額合算療養費の理解が早くなるので、高額療養費について軽く説明致します。

 高額療養費とは、健康保険による保険給付によってカバーされない自己負担額(通常、3割負担ですよね)が所定の額を超えた場合に、つまり同一月における自己負担額の合計額が高額となった場合に、一定の基準を超えた額(これを「高額療養費算定基準額」といいます)が支給されるものをいいます。

 要するに、自己負担額の合計額が著しく高額となった場合には、一部払い戻しがある、ということです。この考え方は、高額合算療養費についても適用されます。

高額介護合算療養費の意義

 高額介護合算療養費とは、健康保険における自己負担額と、介護保険における自己負担額の合計額が、年間上限額を超えた場合に、その上回った額について支払いが受けられるものをいいます。

 要するに、健康保険と介護保険を使ったけれども、年間通して見ると、自己負担額が著しく高額となった場合に、高額介護合算療養費として、一部払い戻しを受けることができるということです。

高額介護合算療養費の支給要件

介護合算算定基準額を超えること

 高額介護合算療養費の支給要件は、健康保険法に規定されていますが(健康保険法115条の2第1項)、やや複雑な規定の仕方をしているので、ザックリ説明すると、以下のとおりとなります。

 健康保険を利用して自己負担した金額と、介護保険法に規定する介護サービス利用者負担額介護予防サービス利用者負担額の合計額が、介護合算算定基準額と呼ばれる自己負担限度額支給基準額とよばれる事務経費の500円を合算した額を超えていることが支給要件となります。

高額介護合算療養費の計算期間

 高額介護合算療養費を計算するための期間は、前年8月1日から7月31日までの1年間を単位として計算されることになります。高額療養費のように月単位ではなく、年単位で計算される点がポイントです。

高額介護合算療養費の支給対象

 高額介護合算療養費は、基準日に健康保険の被保険者である者に支給されます。
 この基準日とは、計算期間の末日である7月31日のことをいいます。

介護合算算定基準額

介護合算算定基準額の意義

 介護合算算定基準額とは、健康保険と介護保険を利用して自己負担した上限額のことをいいますが、この介護合算算定基準額は、被保険者の年齢及び所得により細かく区別されています。
 大きく年齢により分けられ、その上で、所得により5段階または6段階に分けられています。

70歳未満の場合 

標準報酬月額83万円以上・・・212万円
標準報酬月額53万円以上83万円未満・・・141万円
標準報酬月額28万円以上53万円未満・・・67万円
標準報酬月額28万円未満・・・60万円(筆者はココです)
低所得者・・・34万円

70歳以上の場合

標準報酬月額83万円以上・・・212万円
標準報酬月額53万円以上83万円未満・・・141万円
標準報酬月額28万円以上53万円未満・・・67万円
標準報酬月額28万円未満・・・56万円(ココから下の所得が70歳未満と異なります)
低所得者Ⅱ・・・31万円
低所得者Ⅰ・・・19万円

まとめ

 以上、本稿では、健康保険法上規定されている高額合算療養費について、その概要を解説してみました。一応紹介はしましたが、細かな数字は、資格試験でも目指さない限り覚える必要はありません。

 私たちが覚えておかなければならないのは、健康保険と介護保険のセーフティーネットとしての効果の大きさとその有意性です。健康保険と介護保険が、私たちの自己負担額が大きくなり過ぎないように、守ってくれているということです。

 余り知られていませんが、日本の健康保険は保険料が高い分、非常に手厚い保護が受けられる優秀な保険です。健康保険を利用すれば、余計な民間保険に入る必要はほとんどないはずです。
 これを機会に、無駄な保険を見直すなど、健康保険の有意性を再認識していただければ幸いです。