三井倉庫港運事件 最高裁平成元年12月14日第一小法廷判決(ユニオン・ショップ協定)

事案の概要

(1)Y社は、A組合との間に「Y社に所属する海上コンテナトレーラー運転手は双方に協議して認めた者を除き、すべてA組合の組合員でなければならない。Y社は、Y社に所属する海上コンテナトレーラー運転手で、A組合に加入しない者及びA組合を除名された者を解雇する」との本件ユニオン・ショップ協定を締結していました。

(2) Xらは、Y社に勤務する海上コンテナトレーラー運転手であったが、A組合を脱退し、即刻訴外B組合に加入し、その旨をY社に通告しました。

(3)Y社は、A組合の要求を受けて本件ユニオン・ショップ協定に基づきXらを解雇しました。そこで、Xらは、本件解雇を無効として労働契約上の地位確認等を請求しました。

第一審:請求認容、控訴審:控訴棄却

判旨・判旨の要約

上告棄却

(1)労働者には、自ら団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合の団結権と同様、同協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである。

 したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして民法90条の規定によりこれを無効と解するべきである。

(2)本件解雇は本件ユニオン・ショップ協定によるY社の解雇義務が生じていないときにされたものであり、本件において他の合理性を裏付ける特段の事由を認めることはできないから…解雇権の濫用として無効である。

解説・ポイント

 本判決の意義は、労働者には組合選択の自由があるため、ユニオン・ショップ協定によって特定の組合への加入を強制し、当該特定組合へ加入しないことを理由に組合員を解雇する規定は公序良俗に反し無効であると判断した点にあります。

参考文献

 本稿の執筆に当たり、以下の書籍を参考にさせて頂きました。ありがとうございました。

・最重要判例200 労働法(第5版)大内伸哉 著
・労働判例百選(第10版)村中孝史・荒木尚志 編
・詳解 労働法 水町勇一郎 著