寄宿舎規則とは
寄宿舎の自治を守るルール
寄宿舎規則とは、寄宿舎で集団生活を送る労働者の安全衛生、寄宿舎の自治を守るためのルールのことをいいます。
寄宿舎は、使用者が設置するものであるため、使用者が労働者の私生活に干渉するおそれがあるため、使用者による労働者の私生活への不当な干渉を排除し、寄宿舎内で生活する労働者による自治を守る必要があるのです。
寄宿舎とは
寄宿舎とは、使用者が設置するものであり、常態として相当数の労働者が宿泊し、共同生活の実態を備えるものをいいます。
寄宿舎といえるかは、事業との関連性や場所、寄宿舎内での生活の実態などから総合的に判断されることになります。
そのため、会社の福利厚生施設として提供される社宅やアパート、社員寮などは、寄宿舎内のその生活態様からして、共同生活の実態を有しないため、寄宿舎には該当しないと考えられています。
私生活の自由を侵す行為
寄宿舎生活の自治が守られるために、労基法は使用者に様々な制限を課しています。
たとえば、使用者は、寮長や室長その他寄宿生活の自治に必要な役員の選任に干渉することはできません。
また、労働者の外出又は外泊について使用者の承認を受けさせることや、教育、娯楽その他の行事に強制参加させること、共同の利益を害する場所及び時間を除き、面会の自由を制限することは寄宿舎内で生活する労働者の私生活の自由を侵す行為と考えられるため、禁止されています(労基法94条)。
寄宿舎規則の作成と届出
絶対的必要記載事項
寄宿舎規則に必ず記載しなければならない、下記のような絶対的必要記載事項があります。
寄宿舎規則は、使用者が作成し、所轄労働基準監督署長に届出なければなりません。
1.起床、就寝、外出及び外泊に関する事項
2.行事に関する事項
3.食事に関する事項
4.安全及び衛生に関する事項
5.建設物及び設備の管理に関する事項
なお、絶対的必要記載事項を欠く寄宿舎規則は無効とされます。「絶対」ですから。
労働者の同意
寄宿舎規則はそこに寄宿する労働者の利益に直結する事柄であるため、寄宿舎規則の作成や変更については、当事者である寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意が必要となります。
また、寄宿舎規則を届け出る際には、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意があったことを証明する書面の添付が必要とされています。
なお、絶対的必要記載事項の一つである「建設物及び設備の管理に関する事項」の作成、変更、届出については上記労働者の同意は必要とされていません。
「建設物及び設備の管理に関する事項」については、使用者の裁量によるところが大きいと考えられるからです。いつ、どこに、どのような寄宿舎を建設するか、またどのような設備を設置するかは、費用などのことを考えても、使用者に広い裁量を認めざるを得ないからであると考えられます。
まとめ
寄宿舎規則を作成するポイントは、その趣旨が寄宿舎で生活する労働者の生活を使用者による不当な干渉から守る点にあることから、労働者の生活を守るために不可欠な絶対的必要記載事項を記載した上で寄宿する労働者の過半数の同意を得て、所轄労働基準監督署長に届け出なければならないということです。