特定機械等の種類と規制

特定機械等とは

 特定機械等とは、以下に挙げるように、特に危険な作業を必要とする機械のことをいいます。
 特定機械等は、労働者の安全や健康を脅かすおそれがあるため、製造の前段階や製造時、設置時、一定期間経過後に許可や検査が必要とされています。

1.ボイラー(小型ボイラー等を除きます)
2.第1種圧力容器(小型圧力容器などを除きます)たとえば、原子炉などが該当します。
3.クレーン(つり上げ荷重が3トン以上(ただしスタッカー式クレーンは1トン以上)のもの)
4.移動型クレーン(つり上げ荷重が3トン以上のもの)
5.デリック(積載荷重が2トン以上のもの)
6.エレベーター(積載荷重が1トン以上のもの)
7.建設用リフト(ガイドレールの高さが18メートル以上のもの)
8.ゴンドラ

 これらは日本国内で使用されることを前提に規定されており、国外で使用される場合は、特定機械等には該当しません。

 なお、上記ボイラーや第1種圧力容器のことを特別特定機械等といいます。
 とりわけ危険な機械という意味で「特別」という言葉が付け加えられています。

特定機械等の製造許可

許可権者

 特定機械等の製造を行う者は、予め都道府県労働局長の許可を得なければなりません
 都道府県労働局長は、許可の申請があった場合、当該特定機械等が厚生労働大臣の定める基準に合致している場合には、許可をしなければなりません。
 都道府県労働局長の裁量により許可を決定することはできないということです。

 なお、一度都道府県労働局長の許可を受けたものと同一型式の特定機械等を製造しようとする場合には、改めて許可を受ける必要はないとされていません。
 一度許可を受けていれば、労働者の安全と健康が脅かされる恐れが小さいと判断されるためです。

製造時等の検査

 次のいずれかに該当する者は、特定機械等の種類に応じて、特定の行政機関の検査を受ける必要があります。

1.特定機械等を製造した者
2.特定機械等を輸入した者
3.特定機械等で厚生労働省令で定める期間設置されなかったものを設置しようとする者
4.特定機械等で使用しようを廃止したものを再び設置し、又は使用しようとする者

 たとえば、特定機械等のうち、移動式クレーンやゴンドラ(両方とも移動する機械であることが前提です)は、製造時に都道府県労働局長の検査が必要とされています。

 他方、特定機械等のうち、ボイラーや第1種圧力容器のような特別特定機械等については、登録製造時等検査機関の検査が必要とされています。
 
 登録製造時等検査機関とは、厚生労働大臣の登録を受けた専門的な検査機関のことであり、爆発性の危険が高い機械など、とりわけ労働者の安全と健康を脅かす危険の高い機械の検査を行うための機関とされています。

設置時等の検査

 次のいずれかに該当する者は、特定機械等の種類に応じて、労働基準監督署長の検査(落成検査、変更検査、使用再開検査)を受ける必要があります。設置した際の検査のことを落成検査といいます(あまり聞きなれない言葉です)。

1.特定機械等(移動式のものを除きます)を設置した者
2.特定機械等の厚生労働省令で定める部分に変更を加えた者
3.特定機械等で使用を休止したものを再び使用しようとする者

 たとえば、ボイラー、第1種圧力容器、クレーン、デリック、エレベーター、建設用リフトのような特定機械等は、設置時、変更時、使用再開時に労働基準監督署長の検査が必要となります。

特定機械等に係る検査証

検査証の交付と裏書

 都道府県労働局長又は登録製造時検査機関は、製造時等検査に合格した移動式の特定機械(移動式クレーンやゴンドラ)について、検査証を交付することになります。
 
 他方、設置時の検査に合格した特定機械等(ボイラー、第1種圧力容器、クレーン、デリック、エレベーター、建設用リフト)については、労働基準監督署長が検査証を交付することになります。

 また、労働基準監督署長は、変更時の検査、使用再開時の検査に合格した特定機械等について、検査証の交付ではなく、裏書を行うことになります。
 検査証はすでに交付済みであるため、その検査証に「使ってよし」とする裏書を行うということです。

検査証の有効期間

 上記検査証の有効期間は、特定機械等の種類により異なります。
 
 たとえば、ボイラー、第1種圧力容器、エレベーター、ゴンドラの有効期間は1年とされていますが、クレーン、移動式クレーン、デリックの有効期間は2年とされています。

 なお、建設用リフトの有効期間は設置から廃止までとされています。

性能検査

 特定機械等に関する検査証の有効期間の更新を受ける場合には、厚生労働大臣の登録を受けた登録性能検査機関が実施する性能検査を受けて合格する必要があります。
 
 登録性能検査機関も、登録製造時検査機関と同様に、特定機械等という労働者の安全と健康を脅かす危険な機械の有効性を審査するための専門的な機関となります。

まとめ

 本稿では、特定機械等の種類とその規制について紹介しました。
 
 特定機械等のように、労働者にとって危険な機械は、厳格に審査する必要があります。
 
 検査機関に、都道府県労働局長や労働基準監督署長だけでなく、登録製造時検査機関のような専門機関を設け、検査時に製造時から設置時、変更時、使用再開時と多段階の検査機会を設け、さらに検査後の有効期間を1年又は2年と短期に設定したのは、手厚く労働者の安全を確保しようとする趣旨の現れだといえそうです。