三菱重工長崎造船所事件 最高裁平成4年9月25日第二小法廷判決(政治スト)

事案の概要

(1) Xらは、Y社の従業員であり、また全日本造船機械労働組合三菱重工支部長崎造船分会の役員でした。
 Xらは長崎県労働組合評議会の方針に従い、原子力船の入港及びこれに対する政府、長崎県らの方針、施策等に抗議して、上記長崎分会の組合員243名に対して、Yの中止申し入れを無視して30分ないし1時間の職場離脱をするように指令し実行されました。

(2) YはXらに対し、企業にとって対処不能かつ何らの要求もない事項によるストライキは生産遂行上、職場秩序維持上看過できないとして、上記ストを指揮・補佐したXらを出勤停止5日ないし3日の懲戒処分に付しました

(3) Xらは、本件懲戒処分が正当な争議権行使に対してなされたものであり無効であるとして、その確認を求めて提訴しました。

第一審:請求棄却、控訴審:控訴棄却

判旨・判旨の要約

上告棄却

 使用者に対する経済的地位の向上の要請とは直接関係のない政治目的のために争議行為を行うことは、憲法28条の保障とは無関係なものであると解すべきことは、当裁判所の判例(最高裁昭和43年(あ)第2780号同48年4月25日大法廷判決・刑集27巻4号547頁)とするところであり、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違憲はない。

解説・ポイント

 本判決の意義は、本来争議行為(ストライキ)は昇給や賞与の支給など労働者の経済的地位の向上を目指して行われるものであるから、当該目的と関係のない政治ストを目的として行う争議行為は違法であると判断した点にあります。

参考文献

 本稿の執筆に当たり、以下の書籍を参考にさせて頂きました。ありがとうございました。

・最重要判例200 労働法(第5版)大内伸哉 著
・労働判例百選(第10版)村中孝史・荒木尚志 編
・詳解 労働法 水町勇一郎 著